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それなのに、和貴の目に映るのはたくさんの忙しそうな黒衣だった。
自分の手を見ると真っ黒になっていることに驚いた和貴は、理解が出来ずに茫然と立ち尽くしていた。
「え? 俺の勇者生活は?」
そんな嘆きは誰にも届かず1人の黒衣から声をかけられた。
正しくは叱られた。
「おい! そこのお前! 早く仕事しろ!」
「え?」
「またハバナ草原のグリーンスライム達が全滅したみたいだからとっととリスポーンさせてこい!」
「え?」
「なんだよこいつ。あ、そこのお前! グリーンスライムの件頼んだ!」
「了解!」
和貴の頭の中には『?』しかなかった。
和貴の記憶が正しければハバナ草原はチュートリアルの次に訪れるべき草原のはずだ。
このゲームは一点にプレイヤーが集中してしまうとゲームが成り立たなくなるため、いくつものサーバーに意識が自動配分される仕組みらしいのだが、それでも少しばかり他のゲームよりも敵キャラのリスポーンが遅めらしい。
和貴は、勿論その情報も知っており、先程の黒衣達の言葉を聞いてひとつの仮説を立てた。
そう。
自分は異世転の裏方の世界に入ってしまったのではないか、と。
和貴はその仮説を立てた後、改めてほかの黒衣達の会話を聞いてみた。
「チーターが出たぞ!」
「またかよ」
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