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「ぅ、えっ…?な、なんで…?」
まるで死刑宣告を受けたように、絶望的な顔をするシャルティ。
「自分の肉体を良く見てみやがれ。どこもかしこも肉が乗ってんじゃねえか。」
「ぇ…そ、そうでも…なくない…?」
「背を丸めたら2段になる腹。靴下に乗った肉。尻に食い込んだパンツの紐。これを聞いてもまだそう言えんのか」
ザンキが指摘した箇所を自ら眺めるシャルティ。さらに直接触って、触感も確かめてみる。
腹や尻に触れ、指先に力を込めると、程よく押し返しながらも、確かにムニムニと埋まっていく。
そして、初めて気付いた。
「えっ。…ま、まずくない…?これじゃ…まるで…」
「その先の言葉、自分の口から言うか俺様にビシッと言われるか選ばせてやるよ」
「…この現実からは目をそらしたい…けど、そらしたらダメな気がする…だから、言って、ザンキ…」
「んじゃ遠慮なく。…この肥満気味ヤローが!!」
「はうっ…!」
魔物の往来がある道で、躊躇ないザンキの鉄槌に打たれ、シャルティははらはらと涙した。
「ろくに運動もせず引き込もったまま食っちゃ罠作って寝食っちゃ罠作って寝を繰り返してりゃ肥えるに決まってんだろうが!!自分大好き野郎か!!」
「野郎じゃないけど、もっとお願いします…!」
「オウその根性は大したもんだ!!ならなんで太る前にやる気見せなかったんだゴルァ!!」
「め、めんどくさくて…あと、作業室薄暗いし、いっつも厚手のジャージとか着てて、気付かなかったから…」
「どんぐれぇ部屋から出なかったのか、言ってみろ。」
「えっとー…3ヶ月ぐらい?」
「半年だバカヤロー!!」
騒ぎを聞き付けた魔物が、続々とふたりの周囲に集まってきた。
緑色の肌の小人、狼型魔物、牛人、軟体魔物などなど。
端から見れば、人が魔物に囲まれて絶体絶命的状況に陥った図。
しかしその実、いずれもシャルティの知り合いや顔見知りばかりだった。
中でも、真っ先に声をかけてきたのは…。
「お、シャルちゃんとザンキのダンナじゃないか。どうした、またなんかやらかしたのかい?」
体長5メートルをゆうに越える筋骨隆々な逞しい体躯。隻眼。太くて黒い双角。
悪役要素が三拍子も揃っているのに、実は超穏やかな性格の下町鍛冶師、ミノタウロス。
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