15人が本棚に入れています
本棚に追加
しかも彼女は3週間ほど爆睡していたせいで、何も口にしていないのだ。むしろ眠ったまま死んでいなかったこと自体が奇跡である。
「そういえば…まだ、なにも…たべてなかったんだっ…た………」
どうにか痩せなければならないと、己を鼓舞してここまで歩いてきたが、空腹を自覚したとたんに腹が盛大に唸った。
「…のど、かわいた……おなか、すいた……」
もう気力で枯渇はごまかせない。倒れる寸前のシャルティは、せめて砂嵐から逃れようと、両腕を伸ばして遺跡の入り口に突っ込んだ。
「よい、しょ…っ…んっ…ん?」
腕、頭…まではすんなり入ったが、早くも立派に育った胸がつかえてしまった。
「あれ…よいしょ、よい、しょ…」
小型の水風船をふたつぶら下げたような状態では、どう足掻いてもひっかかってしまうのがオチである。
「おか、しいな…。去年はとおれたのに…」
それもそのはず。シャルティはこの1年で、女性として著しく成長したのだ。
身長は伸び悩んでいたが、胸と腰回りは凹凸がはっきりと見られるようになり、妖しい色香を振り撒いている。まあ、それにつれて腹も脚もだいぶ成長したのだが。
ともかくシャルティは諦めず、身体をひねり、無理矢理自身を捩じ込もうとする。しかし。
「ふぐ、ぐぐぐぐ…っ」
ぐにぃ…。
やはりどうしても胸がつかえてしまう。シャルティは一度身を引いて、砂地に座り込んだ。
「はぁ、はぁ…。どうしよ…あとちょっとで、目的地なのに…」
シャルティが目指す場所は、バシィータ古代遺跡内部・地下8階。
いつもならば面倒くさがって諦めてしまう場面だが、今日ばかりは絶対に諦めない理由があった。
…と、話を進める前に少し、ダンジョンについて説明をさせていただこう。
先程述べたように、ダンジョンは踏み入るごとに地形を変えるキテレツな仕様なのだが、なかには形が変わらない階層も存在するのだ。
各ダンジョンにおいて形状不変の階層が最も多いのは、ダンジョンに住む魔物一族とボスが暮らす最奥層の部屋である。
そして最奥層最深部には、ダンジョンの入り口へと一瞬でワープ出来る魔法陣が必ず設置されているものだ。
これはなぜかというと、何らかの原因によりダンジョンの入り口が塞がってしまったり、人類に追い詰められたり、外部への移動が困難になった際の緊急避難経路として「設置が義務付けられている」からだ。
最初のコメントを投稿しよう!