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(…ボーッとしてて気付かなかったけど、足首も何かに締め付けられてるような…かゆっ。なんか自覚したら、唐突に痒い…)
後ろ手に縛られた手足の首に、じんわりと痒みが広がる。
どうにかして患部を掻けないものか、身をよじってから、不覚にも身体が無事に動くことが証明された。
並びに、視界が暗黒に包まれているのも、音がくぐもって聴こえるのも、単に目隠しと耳栓をされているだけだと気付く。
そして、誰がどのような目的で自分を捕らえたのかも、瞬時に察した。
シャルティは少し顔を動かし、微かに聴こえる話し声の方に向くと、うんざりした様子で言い放った。
「…ねえ、どうせそこに居るんでしょ。英傑師団戦闘小隊。」
シャルティが声を発すると、微かな話し声がピタリと止んだ。
肌に触れる空気が、僅かにだが流動していくのがわかる。誰かが側に歩み寄ってきたようだ。
「~~~?」
かなり遠くから話し掛けられているようで、性別も何を言っているのかも判然としない。
返答に困り、シャルティが黙っていると、いきなり何者かが縛られた手首を掴んで、ぐいっと引っ張りあげた。
間髪入れず、今度は首を掴まれ、座ったまま壁に押し付けられる。首を締めるのではなく、あくまで腕と背を壁に押し付け、抵抗しないよう拘束するのが目的らしい。
(う…寝そべった状態からいきなり起こされると、頭がクラクラする…)
何も摂取していないせいで、未だに体調は回復しない。しかし相手はシャルティの都合などお構いなしに事を進めていく。
耳につまっていたものと目隠しをほぼ同時に取り外され、不足していた情報が一斉に飛び込んでくる。
まず目についたのは、淡い橙色の灯に照らされて浮かび上がる壁。古びた黄土色と質感から見て、バシィータ古代遺跡入り口のレンガと同じ材質だ。何よりもシャルティ自身が覚えていた。
(ここ…やっぱりバシィータ古代遺跡だ。何階層かはわかんないけど、まちがいない…)
「おい貴様、何を呆けている」
周囲の状況把握を最優先していたシャルティの身に、若い男性の声が降り注ぐ。
澄んだ魔物の声ではなく、シャルティにとっては不快音でしかない、人間の男性の声だった。
「(あー…あえて視界にいれないようにしてたのにな…)」
シャルティは男性から視線を外したまま、露骨に顔をしかめる。
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