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かといって、手も足も縛られたままでは男性から逃げることすら不可能なのだが。
「人世を裏切るとはどういった意味なのか、どのような行為に及んだのか、気になって仕方がないんだ」
「(うざ…。…でもこいつの性格上、話さないとしつこく食い下がってきそうだし…。…嘘の説明考えるのも、めんどいし…ああもう、どうでもいいや…。ホントの事言お…)」
シャルティは深い深い、憎悪に満ちたため息をついた。
そして男性の顔をキッと睨んで、少し強めに言い放った。
「…いま、あんたの目の前に居るのが、人世の裏切り者だよ」
「は…?」
男性はキョトンと目を丸くした。
「…罪状は、全世界の英傑師団共通であり、数千年前…英傑師団発足当時から絶対不破とされてきた『制約』を破ら…っ。…破ったことだよ」
最後の言葉を言い直す際、シャルティは僅かに眉根を寄せた。己の過去を口にしたことで、忌々しい記憶が蘇ってきたのだ。
「…あんたも、英傑師団員なら『制約』のことくらい知ってんでしょ…」
常時無愛想なシャルティがやや不機嫌になった。ただでさえ半開きの目がさらに細まり、人相を悪くしている。
そんななか男性は、彼女の返答に少なからず動揺していた。
「ああ、無論、制約については承知している…だが待ってくれ。貴様が人世の裏切り者だと?冗談…でもなくてか?」
「…こんな状況で嘘なんかつかないよ、めんどくさい…。…てっきり、私を知ってるから縛ったんだと思ってた…」
「いいや、誤解するな。貴様を縛ったのは断じて俺ではない。ダンジョンで倒れていた貴様を発見し拘束したのは、今回の作戦を指揮する遊撃隊分隊長で」
「…どうでもいいよ、そんなこと。結果として私が縛られたことに…違いはないでしょ…」
「それはそうだが…貴様、やけに顔色が悪いな。…いいや、そもそも倒れていたぐらいだから、どこか具合が悪いのか」
「…うるさいなぁ…あんたには関係ない、でしょ」
意識が冴えたことにより、空腹と枯渇の波が再び押し寄せてきた。
無愛想な態度を強めたシャルティに、男性は少し呆れ始めていた。
「まったく、人が心配してやっていると言うのに…。そもそも貴様、若い女子がそのような下着姿で出歩くとは何事だ。服はどうした、服は」
「は…?…これ、私の外出用の正規衣装だけど」
「は?」
「は…?」
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