試作品:闇堕ちしたら人生楽しくなりました

3/29
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
 --魔物の都、トウキョウィズダムだった。  少女がサイタマゴリアから追放されて、約3年後。  人によるトウキョウィズダム襲撃は収まるところを知らなかったが、魔物たちが被った被害は、3年前と比べて格段に減っていた。  それは何故か。簡潔に結論を述べると、人の世から追放された少女が魔物たちの軍勢に加わり、人々を撃退していたからである。  少女は特別な戦闘力こそなかったが、実は他人と違う特殊な能力…「魔物と会話できる」という特技を持っていたのだ。  この能力のおかげで、少女は人と会話するように魔物との意思疏通を図れてしまう。よって少女は魔物たちに対して一切の敵意がないことを伝え、最終的に、人の欲望を叶える聖杯を持った魔王の判断により、トウキョウィズダムに迎え入れられた。  それからなんやかんやあって、彼女は魔王から「魔物のみが持つ力」である「魔力」を供給する装具と、1匹の使い魔を授かった。  人の身でありながら魔法を扱えるようになった少女だったが、彼女がその力を直接的な攻撃に昇華させることはなかった。  争いを好まない魔王にとっても、彼女が暴虐的な判断をしなかったのは嬉しい出来事だった。  後に彼女が独自に研究を重ね、やがて編み出した魔法は、素材と魔力を掛け合わせて設置型の罠を生成する「罠魔法」というものであった。  誰よりも魔物よりも、人の世と人類を怨んでいるからこそ、彼女はそう簡単に命を奪いはしない。  彼女が作り出す八百万(やおよろず)の罠魔法は、仲間の魔物たちを守りつつ、トウキョウィズダムに攻め入ってきた人類に八つ当たりするための防御(まほう)だ。  -決して自分で攻撃性のある罠を使用しないこと-  -間接的に人類に復讐を果たすこと-  それが彼女、罠職人「シャルティ=エレトラン」の美学であり、願い。  -決して自分から人類に攻撃を仕掛けないこと-  -シャルティが人類と魔物の和平共存を願うように導くこと-  それが魔王「グリフレスト=A=ガヴェイン」の美学であり、願い。  これは、そんな復讐罠職人(リベンジトラッパー)淑女魔王(フェアレディサタン)たちの、比較的ゆるゆるな日常を追った、生活圏防衛系復讐物語(ダンジョンバトルコメディ)である。 -リベンジトラッパー:パーティ追放(クビ)にされたから、闇堕ちして敵の罠職人になった。-  開幕。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!