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見た目はまあまあ可愛らしい(?)方だが、彼の声質はとても渋く重みがある。そして口調も性格も、見た目に反してだいぶ荒々しい。
「さっさとしろよグズが。ったく、期日に下駄履かせといて正解だったぜ」
少女に対して毒を吐きまくるザンキだが、シャルティは並外れたマイペース人間である。
罵倒しても全く狼狽えないどころか、微塵も反省もしない困ったちゃん(笑)なのだ。
ネチネチとした怒号が降り注ぐさなかシャルティは悠々と髪をまとめ、左耳の少し上後方で括った。
「…あれ、そういえばザンキ何で作業場にいるの。私、ドアのカギ施錠してたよね」
「露骨に論点ズラすんじゃねえよ。合鍵貰ったんだよ、魔王様からな」
ザンキは羽の付け根から、名刺サイズのカードキーを取り出して自慢げに見せた。
それを見たシャルティは、元から半開きの眠たそうな目を更に細めた。
「うわー… 魔王、なに余計なことしてくれちゃってるの…」
「てめぇがここ3週間ぐれぇ引きこもってっからだろ、この出不精が」
「えー…まだ3日くらいしか経ってないような気が…あ、そうだ。依頼された分の罠を作ったあと、新しい超強力催眠罠の作製に取りかかって…暴発したんだった。」
「は?」
「あはははは。」
薄暗い空間に、シャルティの棒読み極まりない笑い声が染み込んだ。直後、彼女の腹から「ゴゴゴゴゴゴゴ」と地鳴りのような重低音が聞こえた。
「…そういや、おなかすいたかも。ザンキ、ごはーん」
「てめぇ…馬鹿の上限値振り切りすぎだろ」
「そうだなぁ…肉食べたい。がつんとしたの、よろしくー…」
「会話しやがれカスが。消し炭になりてぇのか?」
ザンキの眉間に2本の深い皺が刻まれ、ついでに7つの怒りマークが額じゅうに浮かび上がった。
だがシャルティは、やはりというかマイペースそのものだった。作業机の片隅に置いてあった5つのスティック型メモリー機器を掴み、ザンキの足元に置いた。
「依頼された罠の発動術式はこのメモリに入ってるから、あとは納品よろ~…」
「オイ。俺様に押し付けてんじゃねぇよクズが。てめぇがやれや」
「…ねえザンキ、お前の主はだれだっけ」
「あん?何で今さらんなこと聞くんだ。俺様は魔王様の使い魔、すなわち魔王様が俺様の主だ」
「じゃあその魔王が私を受け入れてくれたとき、お前に命令したことはなに」
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