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「…これからはシャルティの使い魔としても励むように。」
「うむ。で、その私がお前に命じてるの。メモリの納品と肉料理の調達。10分以内によろ~…」
全魔物の生活と存在を支持し、古来からトウキョウィズダムの頂点に君臨する魔物の王、通称魔王(そのまんま)。
ザンキはデッサンがイカれたゆるキャラっぽく見えるが、歴とした魔王直属臣下のひとりであり、お約束、「四天王」の一角を担っているのだ。
なんでも太陽すら焼き焦がす炎を吐くとか、デコピンで海を割ったとか、にわかには信じがたい噂が独り歩きした結果…魔物呼んで「劫焔斬影竜」という痛々しくて目も当てられない二つ名がついて回るようになった。
そんな劫焔斬影竜を顎で使うシャルティだったが、先程彼が言った台詞を思い返してみて、バッと顔を上げた。
「…ねえザンキ」
「あ?んだよ」
「私が作業に取りかかってから3週間ってことは…今日、まさか…」
「ああ、浅黄月24日、今は朝9時19分だ。…魔王様は7時頃にゃ「向かった」ぜ」
と、メモリースティックを担いだザンキが軽く鼻で笑うと、マイペースなシャルティがいきなり跳ねるように立ち上がり、バタバタと慌て始めた。
「それをはやく言ってよ…ザンキのばか」
「俺様のせいにすんな」
照明を点灯させる暇も惜しいのか、シャルティは薄暗いなか、いきなり小豆色のジャージ上下を脱ぎ捨て、作業台に対面するクローゼットへ走った。
「今日だけは…だらだらしてらんない。はやく、しなくちゃ…」
クローゼットのなかには、シャルティが魔王から貰った露出度の高い魔装衣が、何着もハンガーにかけられている。
全て同じデザインのものだが、ものぐさなシャルティは「自分でコーディネートしなくていいから楽」と利便性を感じていた。
すぐ目の前にあった服を手に取り着替えていると、脱ぎ散らかされた服を律儀に畳んでいるザンキが愚痴を漏らし始めた。
「ったく、そもそもアホすぎんだろ。罠師が自分の罠にかかってんじゃねえよ」
「だから、何度も言ってるでしょ…。私は罠を作る罠職人であって、使用者側じゃないの」
「似たようなもんだろ」
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