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「ぜんぜんちがうよ…ザンキはなんにもわかってない」
「けっ。魔物たちから見りゃ、人類の職種に違いなんざねえよ。剣士だか格闘家だか弓師だか罠師だか知らねぇが、どれも魔物たちを一方的に殺すことしかしねぇだろうが」
シャルティが脱ぎ散らかした服を律儀に畳みながら、ザンキは人類に対する愚痴を溢した。
「パジャンはもともと俺様たち魔物の住処だったってのによ。後から来やがった人類共め、好き放題やりやがって」
「うん…その点については、人類たちに非があるよね…」
「あ?なに言ってんだ。てめぇは人類に仇為す唯一の存在、魔物たちの協力者…魔王様の手足んなったんじゃなかったのかよ」
着替え終わる直前、ザンキが言った。
「まさか、今さら人類に寝返るってのか?」
するとシャルティは薄く笑んだ。襟元と腰から伸びる黒く透けた薄布をなびかせながら振り返り、クローゼットを閉めた。
「…それこそ、まさか…だよ。そんなこと、あるわけないでしょ」
最後に左手首に装着されたカフスの布を下にずらして、布と繋がっているバングルを撫でてから再び被せ直した。
ザンキは怪訝な表情を浮かべるが、すぐに「フゥ」とため息をついて、気を緩めた。
「ま、てめぇに限ってんな気ぃ起こすわけねぇか。誰よりも人類を恨んでる、てめぇに限って…な」
「…当たり前でしょ。人類は、自分達の安寧のためなら、虫でも動物でも魔物でも…人類すらも容赦なく殺してしまう、強欲な、醜い怪物…だよ。そんな卑しい奴らのところに帰るだなんて、考えたくもない」
シャルティの全身から滲み出す闇のオーラ。それを至近距離で浴びたザンキは、あまりの禍々しさに寒気を感じてしまった。
「(相変わらずこの話んなると、雰囲気がガラッと変わっちまいやがる。あーおっかねぇ。)」
ドラゴン(?)であるザンキの戦闘力は、人類であるシャルティを遥かに凌駕している。もちろんザンキ自身もその自覚があった。
しかし何故か、心のどこかで「彼女には絶対に敵わない」と、情けない結論が出ているような気がしてならないのだ。
「人類の栄華は…私の罠で終わらせてやる。…あ、でも「人に危害を加えた」とかの責任は負いたくないから、罠を仕掛けるのはザンキなんだけどね」
「責任転嫁してんじゃねえぞゴルァ」
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