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シャルティの人類に対する怨恨は、太陽の熱量よりも凄まじいものだ。
しかし彼女は「マイペース」が骨の髄にまでしみっしみに染み込んだ、極度のぐうたら娘。単純に面倒事が大嫌いなのだ。
責任や義務などを「負担」としか考えておらず、その一切を負いたがらない。
ダンジョン内での対人戦闘において、罠職人という立ち位置だけは頑として守り通そうとする謎の気概を持ち合わせているのに、責務だけは負わない。
要するに、人類を恨んでいるので復讐はするが、逆恨みなどはされたくないのだ。
そのため戦闘中はいつも後方支援に徹している。
出撃前に作成しておいた罠や、現地で調達した材料を組み合わせて罠を作り、ザンキや魔物たちに仕掛けさせ、間接的に人類を迎撃する。
それがシャルティの主な戦法だ。
「あたしは罠を作るだけだから…。あとは仕掛けた魔物の自己責任…ってね」
「悪魔族よりタチが悪ぃぜ、ったく。だがまぁ、てめぇの罠で救われる魔物が居んのも、確かなんだけどよ」
「だてに人類として育ってないからね…。あいつらの虚を突いた罠の作成と配置くらい、お手のものだよ」
シャルティは、ずっと頭に被っていたヘッドギアを、今一度被り直した。
これは、魔王が保持している装具のなかでも変わり種と名高い頭部防具…珍品「モルドレッド」だ。
モルドレッドそのものの防御性能は、あまり高くはない。いってサメの楯鱗程度だが、特殊効力として装備者に無際限の魔力を供給するという、使いようによっては最強ともとれる性能を秘めている。
しかもモルドレッドの恩恵を得られるのは、魔力を持たない人類も例外ではないのだ。
そもそも魔法の発動において必要なものは、端的に言えば魔力だけ。小難しい知識や概念に理解が無くとも、火や水を出したりする程度の比較的簡単な魔法ならば、想像だけで具現化してしまえるのだ。
魔物は、体内に備えられた器官で常日頃から魔力の生成・備蓄を行っている。そしていざという時に魔力を消費し、魔法に変換して体外へと放つことができる。
このモルドレッドは、魔物の魔力生成器官の代用品というわけだ。
服装もそうだが、魔力を持たないシャルティに「魔物らしさ」を付与する、重要な装具なのだ。
「さて…ザンキ、罠の配達は任せたよ…」
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