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私は、生きてきた。
人間という「生き物」として。
でも、もうそろそろ、私は、人間を道半ばで、退(しりぞ)こうと考えた。
強制ではなく、自主的に……
人間を中退したら、私は、あの大空を自由に飛び回っている鳥になりたいと思った。
それには、鳥になるための、資格が必要だった。
私は、自宅で猛勉強して、鳥の資格試験を三度、受けた。
一度目と二度目は、駄目だった。
三度目の資格試験は、過去の問題が多く出題されていて、多分、運営側のミスだった事も手伝って、私は、鳥になる資格を得る事が、出来た。
鳥の資格を、取得した私は、最後の実技で、鳥になるために高層マンションの屋上から、両手を広げて、空に向かって、思いっきりダイブした。
目が覚めた。
鳥になるはずだった私は、居酒屋でアルバイトとして働いていた。
夢だったのか……
結局、私は、思い直した。
人間は、途中で退く事は、出来ない、のだと……
私は、考えた。
何においても、途中で投げ出すのは、結果的に後で後悔するに違いない、と。
今、私は、時給900円の居酒屋でアルバイトをしながら、自宅で、猛勉強を始めたところだった。
何のための勉強かって?
私は、大きく息を吸い込んで、吐き出した。
私は、深呼吸が出来る人間に戻る為に、資格試験の勉強をしている。
そう、私は、中退してしまった人間に、また戻るために勉強をしているのだ。
一度、やめてみて、よく分かった事……
人間は、やめられない……
春になって、桜が咲き誇る頃には、私は、再び人間として生きているだろう。
使っていた、鉛筆の芯が、折れてしまった。
でも、また、削れば芯は、出てくる。
私は、折れてしまった鉛筆の芯を、削りながら、ふと、思った。
人間も、鉛筆も、多分、似たようなものなのだ、と。
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