Ⅴ.

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Ⅴ.

 朝の光が、カーテンの隙間から差し込んでいる。  シオンはその光をまぶたに感じながら、ゆっくりと目を開けた。まだ頭がぼうっとしている。目の前にはすぐそばに横たわるルカの顔があった。  人間は、ぼうっとしている時に何かが起きても咄嗟に反応できないように出来ているのだと知る。数秒見つめて飛び上がって驚いたシオンは、体に重みを感じて自分の体を確認した。がっしりと腕の中に閉じ込められているようだ。  目の前にはルカの眠る顔。それも異常に距離が近い。鼻と鼻がくっついてしまいそうな近さだ。訳もなく恥ずかしくなって顔から火が出た。ルカの寝顔を見たのは初めてのような気がする。  どうしてこんなことになってるんだろう。  そんな疑問が浮かんだが、目の前のルカの顔を見つめていると、理性などどこか遠くに置いて忘れて来てしまったような感覚になった。  「…かっこいい。」 普段から見ていたはずなのにいつもより特別に思える。もしかしたらルカと付き合う夢でも見ていたのかもしれなくて、忘れてしまっている自分が憎くて仕方ないが、今は目の前に好きな人がいるのだからそれでいいと思うことにした。  ルカは精悍な顔立ちをしている。綺麗な褐色の肌で、髭が顎に少し残してあった。男っぽい顔なのに睫毛が長い。  触って確かめたい。そう思って手を伸ばせば、相手のまぶたが突然すっと開いた。  「そんなに見られると穴があく。」  「うあ!」  思わず跳ねたシオンの身体が抱き抱えられる。  逃げられない。どうしてこんなことになっているのだろう。  「る、ルカさん…!あの、どうしたの…」  「別にいいだろうが、押し倒したって」  まっすぐ見つめられ、茶色い瞳がまるで催眠術でもかけるようにシオンの心を射抜いた。頭がくらくらしてきて、思わず「もっとやってください」と言いかけた口を抑える。どうしてこんなに積極的なのだろうか。同じベッドで、抱きしめられながら眠り、果ては押し倒されたなんて、これはもう恋人同士のやることではないか。  ____恋人?  シオンはここに来てようやく昨晩の出来事を朧気ながら思い出した。ルカに告白されたこと、そのあとに唇にキスを貰ったこと。  ____キスを、貰った。
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