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「これだけだ。指先一つで全て終わる」
ルカは指先で銃の形をつくり、軽く腕をはねあげて見せた。
___その瞬間、ルカの視線の先でシオンが血を流して倒れた。寸分違わず頭を撃ち抜いたルカの右手は温度を失い、まるで石のように硬直した。ぞわりとした恐怖が腹の底から這い登ってくる。
「……………。」
ルカは目瞬きをする。
幻は消え、いつも通り血色の良いシオンの顔がルカを見ていた。
シオンがそっと手を伸ばし、固まったルカの右手に触れる。シオンを撃った手が救いを求めているのを、察したような行動だった。
「…あなたか僕が、殺されるかもって思ってるの?第三者またはあなた自身に。」
シオンは静かに言う。
「ケイさん言ってたよ、命令遂行のためなら躊躇なく殺るって。つまり邪魔にならなければ殺されることはないよね。」
「お前は、平気だって言うのか?」
「そうじゃないよ。」
シオンは言葉を切って、黒いコーヒーを口に含んだ。今度は自分を落ち着かせるような動作だ。
「もしあなたが僕を殺してしまったら、あなたはきっと十字架を背負うでしょ。ルカさんにはそうなってほしくない。」
ああ、とルカは思う。
きっとその通りなんだろう。シオンのルカを見る目は想像出来ないくらい敏感だ。ルカがもし自らの手でシオンを殺したら、きっと正気を保てない。
「…すまない。平気なのかなんて聞いて。」
「悪いと思ってるなら、あなたも考えるんだよ。待ってるだけじゃ、いい結果は歩いてきてくれないんだよ。」
だいたい受け身すぎるんだよ、ケイさんもルカさんも。シオンはぶつぶつと、マフィアの幹部と殺し屋に対してそんなことを言う。あんまり頼もしい顔をするものだから、ルカは思わずにやりと笑ってしまった。
「男前だな」
「男ですけど?」
すぐに、ムキになった顔に戻ってしまった。
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