アスファルトの少年

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今、ひろし君が撃たれた 今、ゆうじ君が倒れた 僕はまだ、生きている たけし君たちが僕をねらっている 撃たれるもんか 倒れるもんか 僕の銃がいちばん強いんだ クマゼミのなき声に耳を(さえ)ぎられ 照り返す太陽に視界を(さえ)ぎられ ポンッという音 何かが僕に当たった 今、僕が撃たれた 今、僕が倒れた アスファルトの上に 倒れた僕はそっと目をあける 青い空に入道雲(にゅうどうぐも)がひろがっている たけし君たちの声はもう、聞こえない 僕はもう、撃たれている もうすこし、倒れていようかな いろんな音が聞こえる いろんな声が聞こえる 僕の鼓動(こどう)も聴こえる まだ生きているよ アスファルトの上で 大人になった僕は空を見上げている 高層ビルの間に見える雲はくすんでいる 僕はまだ、生きている 誰から逃げているかわからない 何から逃げているかわからない 僕は銃を持っていない 僕の心がいちばん弱いんだ 街路樹のアブラゼミが喧騒(けんそう)と交差している 照り返す太陽が僕を路面に(さら)している あの夏の日の鼓動(こどう)は今も忘れない 早く見つけてほしい 早くつかまえてほしい 僕は立っているよ アスファルトの上に
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