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「ほんとにそうなんですかね? 男って一口に言いますけどね、僕に言わせりゃ男だって色々いますよ。ほら昔から言うでしょ、蓼食う虫の好き好きとかあばたもえくぼとか、好きこそ物の上手なれとか」
「なんか最後のちがくない?」
勢い余った僕の揚げ足はきっちりと取って、カナコさんはリラックスした顔で冷たいワインを流し込む。さっきからハイペースで飲みすぎだ。
またワインを注ぎにきたウェイターを制してウーロン茶を頼んで、ぶうたれてるカナコさんに一回ソフトドリンクを挟ませることにする。
「だったらあたしウーロンよりオレンジジュースがいいなあ」
「かしこまりました。ブラッドオレンジジュースを……おひとつでよろしいですか?」
「あ、はい。とりあえずそれで」
僕のグラスにはまだワインが残ってる。
カナコさんは昔から酒のペースが早すぎるのだ。さいしょはただの酒豪なんだと思っていたけど、酒だけじゃなくて珈琲やお茶や、ペットボトルの水なんかもたくさん飲むんだと気づいてから、僕はカナコさんの酒のペースに気を配るようになった。単純に、カナコさんは喉が渇きやすい体質で、酒も弱くはないもんだからジュース感覚でぐいぐい飲むけど、考えなしな上判断が甘いからほっとくと酔いつぶれる。
僕は女の人が泥酔するのをみるのが嫌いだ。
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