16人が本棚に入れています
本棚に追加
ごちゃごちゃ揉めだした僕らのところへウェイターが颯爽とやってくる。
「お客様、何かございましたでしょうか」
遠回しに静かにしろと言われているような気がしたが、カナコさんはしれっと自家製サングリアを注文してしまった。
「あ、オレンジは彼が飲むんで。ほら、さっさとそっちのワイン飲んじゃいなさいよ。飲み放題のマナーでしょ!」
これどう考えても悪いのはカナコさんなのに、僕は勢いに負けてグラスの底に残った白ワインを飲み干した。
ウェイターが苦笑いしながら僕のグラスを下げる。
「たぶんですけどねえ、あなたのこういうところが、世の男性に敬遠されているんだと思うですよ」
「おもうですよ? 君って外人だったっけ」
「いっそ外人とかの方がカナコさんには合ってるかもしれませんよ。確かあなた、外資系勤務でしょう。英語ぺらぺらなんでしたよね」
「あ、なーる。外人ね。それ考えてなかったわー」
盲点盲点、なんて言いながらカナコさんが本日のカルパッチョにかぶりつく。
脂ののった分厚いカツオにオリーブオイルと刻みトマトのソースをかけて、味のアクセントはホールでのったピンクペッパー。オシャレだが、これなら僕は鰹のたたきの方が好きだ。
ほらこの脂ののりかた、たたきにして日本酒で流し込んだらさぞやうまかったろうに。
最初のコメントを投稿しよう!