だからカナコさんは結婚できない

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 ごちゃごちゃ揉めだした僕らのところへウェイターが颯爽とやってくる。 「お客様、何かございましたでしょうか」  遠回しに静かにしろと言われているような気がしたが、カナコさんはしれっと自家製サングリアを注文してしまった。 「あ、オレンジは彼が飲むんで。ほら、さっさとそっちのワイン飲んじゃいなさいよ。飲み放題のマナーでしょ!」  これどう考えても悪いのはカナコさんなのに、僕は勢いに負けてグラスの底に残った白ワインを飲み干した。  ウェイターが苦笑いしながら僕のグラスを下げる。 「たぶんですけどねえ、あなたのこういうところが、世の男性に敬遠されているんだと思うですよ」 「おもうですよ? 君って外人だったっけ」 「いっそ外人とかの方がカナコさんには合ってるかもしれませんよ。確かあなた、外資系勤務でしょう。英語ぺらぺらなんでしたよね」 「あ、なーる。外人ね。それ考えてなかったわー」  盲点盲点、なんて言いながらカナコさんが本日のカルパッチョにかぶりつく。  脂ののった分厚いカツオにオリーブオイルと刻みトマトのソースをかけて、味のアクセントはホールでのったピンクペッパー。オシャレだが、これなら僕は鰹のたたきの方が好きだ。  ほらこの脂ののりかた、たたきにして日本酒で流し込んだらさぞやうまかったろうに。
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