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「あ、なにこれおいしい!」
僕が鰹のたたきに思いをはせている間に、カナコさんが自家製サングリアに目を輝かせていた。
「サングリアってなんか子供だましなイメージあるけど、ここのはおいしいわー。さっきとグラス違うし。ベアトリーチェおそるべし」
カナコさん、騙そうにもまず子供はサングリア飲みませんからね。
だがあんまりうまそうに飲むもんだから、僕も興味が出てきた。カナコさんに小児科のシロップ呼ばわりされたジュースを飲みきって、僕もサングリアを追加する。ついつい会計のことを考えて飲み放題でよかったななんて思う。
「サングリアにも赤白ご用意してございますが」
「あ、彼女と一緒で」
「かしこまりました。白のサングリアお持ちいたします」
今度はフォアグラのフランをスプーンでほじりながら、カナコさんが笑った。
「おんなじの頼むことなくない? 君は赤にすればいいのに」
「だってカナコさんがあんまりうまそうに飲むから、僕もそれ飲んでみたいなって思ったんで。おんなじのが飲んでみたいんですよ」
「いやだからさ。言ってくれたら一口あげたのに、ってこと。ま、別にいいけどね」
別にいいならほっといてほしい。
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