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それにしてもこの人、グルメ気取りなだけあってほんとに詳しい。僕は基本うまければそれで満足するけど、カナコさんはうまさに理由を追及するタイプだ。
サークルに入ったばかりで、ただうまいものをうまいとしか言えなかった僕に「うまいなら何がどうしてうまいか考えろ、味の素因数分解をしろ!」とくだを巻き始めたカナコさんを当時の僕はカルチャーショックと共に脳裏に刻みつけた。
味の素因数分解はカナコさんの口癖で、味には甘酸塩苦うま味の五味があり、すべてはその配分で評価されるというのがその主張だ。だからたとえばラーメンなんかを食べても、素因数分解して甘味一、塩味三、うま味二のバランスだとかその内容がうま味のトンコツとサバ節の混合だとか、そういう独自評価をしているらしい。それとは別に食感の素因数分解がどうとかで味と食感の掛け合わせがうんぬん、と講釈は無限に続きそうだったけど、僕は前半の半分も理解しないうちに彼女の話を受け流したからその全貌は掴めていない。そして何より、掴みたいとか思ってもいない。
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