京都の、若女将の意地

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「せやから、京都は変わったらあかんねや。あんた、嵐山の料亭知ってるか? ワインは何十種類も置いてんのに、日本酒や緑茶は一種類しかないねんで。京都の、京料理出してる店がやで。 ……経営事情なんは分かってる。でもな。京都、いや日本はきっと、観光都市として発展するその日から少しずつ、大事なものを捨ててんねん。日本の文化を捨ててんねん。そんなん、あかんと思わんか。……こんな時代やからこそ。なおさら、京都はこだわらな、あかんねん」 「それで、店が潰れてもか」 「そうや」 例え国際化に身を滅ぼされようとも。文化の誇りを貫く姿は、若女将という高貴な砦だった。 真由加はきっと、嵐山の料亭の事を聞いたその日から。世間とは逆に、媚びるという事を捨てたのだろう。 太一には、絶対真似できない京都人の意地。それが馬鹿馬鹿しくも尊く、また一つ、真由加が美しく見えた。 しかし、時代は変わる。変わらねばならないと一番分かっているのは他ならぬ真由加だという事を太一は知っていたし、その変わる変わらぬという苦悩に生きてゆかねばならぬ若女将の意地を、つぶさに感じ取っていた。 (おわり)
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