第1章

3/12
前へ
/12ページ
次へ
子どものころから美月は変わらない。 いつも元気で明るくて… 悩み事なんて 一つもないんじゃないかと佑和は 思っていた。 「だいたい佑和が考えすぎなんよ!」 美月は事あるごとにそう言う。 だけど,美月のようには 生きられない。 「みんなが『美月先輩』みたく  何にも考えずに生きとるわけや  ないんですよ」 そういうと,美月は 珍しくすねた顔をした。 「私やって悩みくらいあるわ!」 美月はそう言ってちょっと 怒った顔をした。 佑和は,ちらりと美月の表情を伺う。 美月は佑和の方を見て 何とも言えない表情を返した。 「どうしたん…ですか?」 「……いいの,なんでもない!」 美月はちょっと怒った顔をして いつもより少しだけ速足で 家へと向かった。 「じゃあね!」 いつもと同じ台詞だったけれど なぜかちょっと怒っている。 佑和は首を傾げた。 翌日の帰り。 美月は自転車置き場にいなかった。 一応念のため…そう思いながら 佑和はクルクルと周りを見る。 どうやら美月はいないみたいだ。 まあ…いい…。 それなら,自転車に乗って 家に帰れる。 佑和はそう思って 自転車を漕いで帰った。 美月の家の前を通りかかる。 美月の部屋の灯りが点いている。 「なんだ…先に帰ってたのか」     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加