第1章

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歩けばそこそこ距離があるけれど…。 美月がそう言うなら…。 佑和にとって美月は 要注意人物…だった。 佑和は不思議だった。 なぜ自分に構うのか? 美月は,美人だし愛嬌はあるし, たぶん好まれるタイプだと思う。 事実,彼女を狙っているという 話はよく聞く。 だけど特定の恋人を 作るわけではない。 そして,入学してきた 2つ年下の俺に構ってくる。 何かのカモフラージュだろうか。 弟…だと思っているのだろうか。 佑和はそんなことを思いながら, 隣を楽しそうに歩く美月を ちらりと見た。 以前は美月の方が ずいぶん背が高かったが 高校生になってやっと 追いついてきた。 間近で見る横顔は…確かにきれいだ。 楽しそうに笑う美月に 幼馴染以上の感情を 抱いてしまいそうになる。 だけどきっと,美月はそんな風に 思っていない。 そう思って佑和はその思いを いつも押し込めていた。 「じゃあね!佑和」 家の前まで来ると美月は 楽し気に手を振った。 「…無邪気やな…」 佑和はボソッとつぶやいた。 次の日も同じ。 なぜか自転車置き場で待っていて 佑和をからかって笑っている。
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