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美月の髪も少し濡れていたが,
あまり気にしていない様子だった。
「あ…バス……
さっき行ったばっかりやね…」
美月はどこか嬉しそうにそう言う。
「先輩…拭かないと
風邪ひきますよ…」
美月は,ハンカチを取り出して
髪を拭こうとする。
しかし,大雨の中,歩いてきたのだ。
佑和は,自分のタオルを差し出した。
「すいません……
汗臭いかもしれないけど…
風邪ひいちゃいけないから…
…緊急対応です…」
そういうと美月はニコッと笑って
タオルを受け取った。
「ありがとう」
ポニーテールをほどいて
髪を拭く美月は……
どこか艶っぽい。
佑和はそんな美月を
ぼーっとする頭でみていた。
「馬鹿ですね…先輩。
俺なんか置いて,帰れば
よかったのに」
佑和は,美月の優しさが
美月と久々に話せたことが
嬉しかったのに…
天邪鬼にそんなことを
言ってしまった。
美月は返事をしなかった。
いつもなら,からかって
来るのに…。
佑和は不思議に思って
美月の顔をのぞき込むと
美月は少し震えていた。
「ほら,言わんこっちゃない。
風邪ひいたんやないんですか?
寒い?」
慌てて佑和はカバンの中から
ジャージの上着を取り出した。
「これも…多分汗臭いですが
緊急事態なので…」
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