第1章

1/12
前へ
/12ページ
次へ

第1章

「もう…いい加減にしてください」 佑和は,イライラする気持ちを 隠せないまま,美月を睨みつける。 美月はちょっとだけ まずい…という顔をしながらも 佑和をからかい続ける。 「えー,いいやない?  昔からの腐れ縁やろ?」 そう言いながら美月は, 佑和の自転車の後ろに腰かけた。 「ダメです。  二人乗りは法律違反です。  歩いてください。  それが嫌なら,僕が歩きますので  『美月先輩』が僕の自転車に  乗って帰ってください」 「えー…もう…相変わらず  頭カチカチやねえ…」 美月はそう言って, 頬を膨らませた。 「それに,もうお互い高校生なので  無駄な密着は辞めてください」 「…むー…」 美月はさらに頬を膨らませたが 何かをひらめいたのか ニヤッと笑う。 「じゃあ,無駄やない  密着ならええんやね~?」 「はあ?」 佑和は呆れて溜息をついた後, さっと自転車に乗った。 「……帰ります」 「あ,ちょっと待って,佑和~」 「…何ですか?」 「わかったから。  ちゃんと歩くから一緒に帰ろう?」 そう笑顔で言われると…弱い。 佑和はそう思っていた。 美月には叶わない。 子どものころからそうだった。 美月に何を言われても その笑顔につい…ほだされてしまう。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加