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「ひっ!! なに!?」
「あはは、イチコったら驚きすぎ」
「柳……勘弁して、アンタの手冷たすぎるんだから……心臓が止まる」
私の首に手を添えたまま、柳アヤはクスクスと可笑しそうに笑っていた。まだ残暑が残るこの時期でも、やはり柳は涼しげだ。いつでも柳の纏う空気はひんやりとしていて、真夏でも薄ら寒さを感じることが出来るので、私にとっては有難い存在だと言える。湿気と生ぬるさで包まれていた私は、やっとほっと一息吐いた。
柳は私の顔を見ると茶目っ気たっぷりな笑顔を浮かべながら、ごめんね、と言うと触れていた手をそっと離した。
その離れた涼が名残惜しくて柳の手を掴むと、今度は柳が驚いた顔をする番だった。
「……そんなに私が触れてるのが名残惜しかったの?」
「どうかな、暑さのせいで頭狂ってるかもしれないからな……柳の手じゃなくてもいいのかも」
「残念。うちでイチコのためにアイス冷やしてたのに、これは私が食べるしかないわね」
「ちなみに種類と味は?」
「ハーゲンダッツのストロベリー。あなたがだーい好きなやつ!」
「ごめん、柳。有難う、愛してる。」
今度は二人で顔を見合わせて笑った。私たちは手を繋いだまま、坂の上に建つ柳の家へと向かった。
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