前章譚 神田古本街

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前章譚 神田古本街

 その古本屋は神田古本街から少し離れたオフィス街にひっそりと佇んでいた。  風化したロクショウの色彩が美しいマンサード屋根、左官職人の手技による優雅な装飾が施されたモルタルの外壁、そしてガラス越しに整然と並べられた年代物の文学全集。  今では数えるほどのなった昭和の面影を残す古本屋といった店構えだが他の店とは異なるところが二つある。  一つは入り口のドアに吊された「予約制」という古びた木製の吊り看板、もう一つは店内に微かに漂うツンとした薬品の様な匂いであった。
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