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ある時、総合宇宙研究所がTPとよく似た新惑星を発見する。TPから300万光年も離れたその星はEAと名付けられ、惑星移住計画の筆頭に躍り出た。地球のことだ。
EA調査団はTPとEAの間を行き来し、移住のための研究開発が行われた。僕は調査団の幹部研究者として、何度もEAに行った。EAは比較的若い星で、地上に生活する人類は、歴史的にも文化的にもまだまだ途上にあった。
一番長く滞在したのは、Lという大陸にあるBという海沿いの街。ここに住む人たちは勤勉で、生活を豊かにすることに努力していた。
Bの街で友人ができた。Jという名まえの経験豊かな農夫で、土の色と同じ焦げ茶色の瞳と健康的な笑顔が印象的な男だった。広い農地で家族と共に多くの種類の農作物を育てていた。
「あんた、何者? なんだその格好?」
はじめてJと逢った時は、しまったと血の気が引いた。Lの大陸に到着した時、人気もなく崖に囲まれた小さな入り江に調査船を泊めた。ここなら見つからないだろうと油断していた。だがそこは、Jが手入をする土地の一部だった。とっさに、自分は海の向こうにある大陸の者で、航海の途中に遭難した、という作り話でその場をしのいだ。
「ほう。海の向こうにも大陸があるのか。人がいるのか」
Jは目を丸くした。名まえを訊ねられ、本名を言うと「そんな名まえ、聞いたことない」と声を裏返した。
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