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この作文を書くこと (Writing This Essay)
僕は、小学五年生。今、国語の時間。
先生が「『今も忘れない』ことを作文に書きなさい」なんて言うから、僕はワクワクしている。その手があったんだ。僕はずっと胸に秘めていたことを思いきり書くことにした。
*
僕は今よりもずっと昔、TPと呼ばれる惑星に住んでいた。とても美しい星だった。
気候は温暖で自然は豊か。住む人種は皆聡明で賢かった。何人もの天才が生まれ、文化と科学が超高度に発達した。
ところが人というのは、どんなに学習を重ねても未熟で愚かな者なのだ。
戦争が起きた。理由なんてくだらない。しかし、争いはTPの全てを巻き込んだ。街は奪われ、国は崩壊した。何百万、何千万という人が命を失った。自然や文化、歴史も科学も、全てが破壊された。
運よく生き残った人々は、顔をしかめては首を振る日々を送り、未熟で愚かな指導者が、破壊の果ての無と痛みにやっと気づいたとき、TPは星としての寿命を迎えていた。そんな時代、僕はジェネラル・サイエンティスト(科学一般の研究者)として、TPの延命に尽力していた。
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