貴方は僕の高嶺の花

5/12
前へ
/12ページ
次へ
「おーい、なにぼんやりしてんだ、竜也」 不審げな琥珀色の瞳に覗き込まれて、竜也はハッと我に返る。 吐息があたりそうな距離感。 桜色の薄い唇を奪いたいという衝動に駆られる。 「なんでもないです。深夜のバイトしてたんで寝不足ですかね」 「ああ、おまえめっちゃバイトしてるもんな。大変だなー」 「まあ。でも働くのは嫌いじゃないんで。先輩、今日は部活行きますか」 「今日は行くぜ」 「そうですか」 そうだと思って、放課後にバイトを入れずにおいて正解だ。 竜也は内心笑みを浮かべる。 光介はそれほど練習熱心なタイプではないのだが、毎週水曜日はかならず部活に参加する。だから、その日は竜也もバイトを外して部活に行くことにしている。 「竜也も行く?」 「はい、今日は行くつもりでバイト入れてません」 「そっか。よし、優しい先輩が部活帰りにメシ奢ってやるよ」 「マジすか。ありがとうございます」 奢ってもらえるのは嬉しい。それ以上に、彼と一緒にどこかに行けるのが嬉しい。 今から放課後が楽しみだ。 今日の星座占い、おうし座はアンラッキーディだったけど大外れだ。 やはり、星座占いなんてあてにならない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加