貴方は僕の高嶺の花

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放課後、竜也はまっすぐ弓道場にやってきた。 初めて部活を見学した時は、新入部員に弓道のかっこよさを感じてもらう為に部員は全員弓道衣を纏っていたけれど、ふだんの部活はジャージ姿で、袴を穿かない。 竜也が弓を手に的の前に立つと、女子部員が集まってきて視線を注いだ。 視線を向けられることに慣れている竜也は、彼女たちにも嫉妬の目を向ける男子部員にも構わずに無心で弓を引いた。 初めは練習をまじめにするつもりなんてなかったのに、光介のせいでいつのまにか上手くなりたいと願うようになっていた。 バイト時間が減るのは痛いけれど、練習して、はやく彼の背中に追いつきたい。 無感動な自分が、そんなスポ根じみたことを考えている。 「おつかれでーす」 軽い挨拶をしながら光介が弓道場に現れた。部員達も同じくらい軽い挨拶を彼にかえす。 弓を持ち、的の前に立った瞬間に光介から気安い雰囲気が消えた。 周囲の人が息を飲むのがわかる。 まるで光介以外の時間が止まってしまったかのような静寂が辺りを包む。 空を切る音、ついで的を射抜く小気味良い音が響く。 息を整えて二本目の矢を番える光介の横顔に竜也は魅入った。 的を見詰める澄んだまっすぐの瞳。あんな瞳を自分も向けられたい。 おこがましくもそう思う。
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