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「あ、ごめんなさい」  昇降口でぼんやりとみぃちゃんを待っていたら、人にぶつかられた。謝ってくれたその人は、けれどすぐになんだという表情になる。 「確か佐々原さんの。何?お姉さんでも待ってるの?」  問われて、曖昧に頷く。  多分、この人はみぃちゃんのクラスメイトだ。何となく顔に見覚えがある。 「佐々原さんなら掃除当番だから、まだかかるわよ」 「うん」  知ってると答えると、その子は顔をしかめた。 「あなた達、お昼も二人っきりで食べてるんだって?それで帰りも一緒、家でも一緒ってべったりしすぎじゃない?」  そう言われるのは初めてではない。  中学の時にも何度か言われた。変えるつもりはないので、いつも聞き流すことにしているけれど。 「双子だからって、四六時中一緒にいる必要ないじゃない。まぁ、話を聞く限り、佐々原さんの方があなたを離したがらないみたいだけど。大変ね。妹離れできない姉を持つと。シスコンもあそこまでくると異常よね」 「やめて」 「え?」  でも、みぃちゃんのことを悪く言われるのだけは我慢ならない。 「みぃちゃんのこと、そんなふうに言わないで」 「何よ。心配して言ってあげてるんじゃない。あなただって、お姉さんとばかりじゃなくて、たまには他の人とお昼食べたりしたいでしょ?それを邪魔されてるなら………」 「そんなんじゃないってばっ」 「ちょっ………あ」  思わず手をのばせばふりはらわれた。変に勢いがついてしまい、尻餅をつく。  しまったという顔をしたその子は、けれどすぐにキッと睨んできた。 「妹はまだましかと思ってたけど、どっちもどっちなのね」  そう言い捨てて、行ってしまった。  立ち上がって、手のひらを見る。右手の下の方が擦りむいていた。血は出ていないけど、皮が細かく剥けている。 「大丈夫?」  声をかけられて顔を上げると、クラスメイトが心配そうな顔をしていた。 「ごめんね。助けに入れなくて」 「ううん。私が先にカッとなったんだし」  悪かった、とは思わないけれど。 「気にしない方がいいよ。観月さん、今日ミコちゃんとケンカしてたから。八つ当たりだよ」 「ケンカ?」 「うん」  なら、あの子はみぃちゃんに嫌な思いをさせたのか。どろどろとしたものが、胸に広がる。 「………大丈夫?」 「うん。擦りむいただけだから」 「保健室行く?」 「洗っとけば平気だと思う。ありがとう」 「そう?じゃあまた明日」 「うん。また明日」
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