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「きぃちゃん。お待たせ」
「みぃちゃん」
「帰ろっか」
「うん」
手を繋いで、帰途につく。
「きぃちゃん。手、どうしたの?」
「ちょっと擦りむいちゃって。それより、今日ケンカしたんだって?」
「う。でも仕方ないんだよ?だってひどいこと言うんだもの」
「それは仕方ないね」
「うん」
肯定すると、みぃちゃんは嬉しそうに笑った。私も嬉しくなる。
双子でも、全く似てはいない。
みぃちゃんの方が背が高くて美人ではっきりした性格をしている。だから、みぃちゃんと仲良くしたいという人はたくさんいる。そんな人たちからしたら私は邪魔で、嫌がらせを受けたことが何度かあった。
さっきの子も、本当はそうだったのかもしれない。
だからといって、許せるかどうかは別だけれど。
親にも、奇異の目で見られている。前に、周りから色々言われもした。煩わしいけど、どうでもいい。みぃちゃんさえ、嫌な思いをしなければ。
みぃちゃんが笑っていられれば、それでいい。
大好きなみぃちゃん。みぃちゃんのことは、私が守る。
「ね。後で歌聞かせて」
「うん。いいよ」
ずっとずっと、一緒にいる。そう、約束した。
「ねぇ、聞いた?」
あれから一週間。登校してきたクラスメイトが、何やら慌てた様子だった。
「一組の観月さん、一昨日から行方不明なんだって」
「観月さん?」
どこかで聞いた名前だと、首をかしげる。
「キコちゃん先週絡まれてたじゃない。あの子」
あぁ、みぃちゃんに嫌な思いさせた子か。顔はよく覚えているけど、名前は忘れてた。
「行方不明?」
「うん。学校終わったあと、家に帰ってないんだって」
「家出とかじゃなくて?」
「さぁ?山狩りはするみたいだよ」
ぼんやりと、クラスメイト達の会話を聞く。
「でも、なんか怖いよね。ほら前にもあったじゃない。こんなこと」
「あった。小学校の時、どっかで神隠しがあったって。うちの学校、それでしばらくの間は集団登下校だったよ」
「私んとこも。あれって結局見つかってないの?」
「じゃない?何人もいなくなったんでしょ?」
「らしいね。キコちゃんとこでも騒ぎになった?」
「うん。ちょっと、大変だったのはよく覚えてる」
神隠しがあったのは私の通っていた小学校で、実際はちょっとどころの騒ぎではなかったけれど。
「怖いよねー」
「ね。早く見つかると良いね」
観月さんが見つかることはなく、代わりに数日後、男性の右腕だけが見つかった。
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