2

2/2
前へ
/9ページ
次へ
 一つ上の学年に転校してきたばかりなのだというその人は、なぜだか昼に顔を見せるようになった。 「キコちゃんてさ、いつもはお姉さんと二人で食べてるんでしょ?の、わりにはお姉さんの姿を見たことないんだけど」 「最近、体調を崩していて。ずっと休んでるんです」 「寝不足そうなのはお姉さんが心配で?」 「そんなとこです」  曖昧に笑って、誤魔化す。嘘ではない。 「本当に仲がいいんだね。秘訣とかあるの?」 「私がみぃちゃん大好きで、みぃちゃんも私を好きでいてくれてるだけですから」 「そっか」  話題はほとんどみぃちゃんの事だった。  仲がいいと噂になっているのに、見たことないからと先輩は興味津々だった。いくらみぃちゃん語りをしても、引くことなく聞いてくれる。その事が物珍しかった。 「そういや、この前のあいつも行方不明になったらしいね」 「この前の?」  何の事だろうと首をかしげる。 「キコちゃん。まさか忘れてはいないよね?初めて会った時の事」 「あぁ、それなら覚えてはいます。ただ、もう済んだ事だったので」  顔はよく覚えてなかったし、名前はわからなかったしで、あの後それとなくみぃちゃんに探りを入れるはめになった。でも、それももう終わったことだ。 「もうこれで何件目だっけ?段々ペース早くなってきてるし」 「先輩、厄介な所に越してきちゃいましたね」  学内外問わず、神隠しが続いている。不必要に外を出回る人も減ってきた。前の時よりも、起きる範囲は広がっていた。  行動できる範囲が広がったし、お腹が空いて我慢できなくなってしまっているから。 「うん。でも、知ってて来たから」  先輩が、じっとこちらを見つめてくる。静かな微笑みと共に。 「父が、ここで起きていた神隠しの事を調べていて。目星がついたって連絡が来て、それきり」  じっと、見つめ返す。 「右腕だけ見つかったのが、僕の父なんだ」  そうか。あれは先輩の父親だったのか。 「父が持っていたはずの物がなくなっていて、ずっと探していたんだ。でも、それももう終わり。後は、片をつけるだけ」 「先輩は………」 「うん?」 「………いえ。何でもありません」  最初から、そのために近づいてきたのか。話を聞きたがったのも、それでだったのか。痛みはない。ただ、凪いでいる。  先輩は、悲しそうな微笑みを浮かべていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加