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指輪と、時計をはずしてサイドボードに置く背中に抱きつくと、変わらないボディソープと、リネンのにおい。
彼との付き合いは、学生の頃からだから……十年以上になる。
気持ちを告げたのは、僕の方。
応えてくれた、彼を心底優しく、愛しかった。どんな痛みでも、不快な視線も、声も耐えようと思った。
形だけだから、と付け加えた彼の入籍にも笑顔で納得したふりをして。
奥さんは、抱いたことがあるの?
一度だけ、訊いたことがある。
彼は、ただ緩やかに微笑んで答える。
子供を作るためにね、と。
抱きたいのは、お前だけだよと。
ごまかすように降ってくる、舌を絡める濃いキスに、丸い指先が触れる足の付け根に、背中に、腰に、嫌でも反応してしまう。
いや、嫌だと思ったことなんかない。
僕は、一瞬だけ勝ち誇る。
彼の結婚相手に。
名前を言いながら、ネクタイを外す。シャワーを浴びる前に、抱いてほしいと耳元で囁く。好きだよ、好きだよ。俺も、お前じゃないと、気持ちよくなんかない。そうだよ、僕だって、このまま消えたいぐらい好きだよ。
好きだよ。
好きだよ、好きだよ、好き。
耳たぶに、首筋に、鎖骨に、胸に、だんだんと口づけが腰の方へと進んでいく。
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