0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
忘却アドヴェンチャラー
人生とは、思いがけないことばかりが起きるものだ。
買い物に出かけたらばったり旧友と出くわしたり、たまたま拾った宝くじが当選していたり、卒業式に好きな子から校舎裏に呼び出されたり、人は「人生は選択の連続だ」と言うけれど、自分ではどうすることもできないことだって、現実では同じくらい起こりうるのだ。
だから明日の講義に遅れないように早めに床に着いた時、机の上の携帯が突然着信音を立てたのだって、それは向こうにとっては必然的であっても、僕からしてみれば偶発的以外の何物でもないのだ。
「...誰だろう」
誰もいない部屋でポツリとつぶやいて、僕は携帯をとる。バイト先ならばっくれればいいし、友達なら適当にあしらって寝ればいい。
だが携帯の画面に表示されていたその名前は、僕をひどく驚かせた。
無意識のうちに思わず応答ボタンを押す。
「おーい久しぶり」
その声は相変わらず明るくて、その場にいるはずないのに、思わず後ずさりしてしまう。
どう声をかけていいか分からず、しばらくそのまま黙っていると彼女は一人でに喋り始めた。
「元気?最近なんか大変なことになってるらしいじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!