表紙 まえがき

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表紙 まえがき

――僕は人とは違う。 昔の僕はそう思っていた。 自分で言うのもなんだが、 バスケ部で運動神経もよく、勉強もそこそこ、女の子からの人気も悪くない、 青春時代を謳歌していたと思う。 でも僕には実際に人とは違う”感覚”があった。 共感覚、別名シナスタジアと呼ばれる感覚。 触ったり、聞いたり、見たりすると、別の感覚を同時に感じる事。 感じる感覚は人により左右される。 一般的には数字に色を感じたり、音に色を感じたり。 中には物事を立体的に把握し、記憶として”自分の中の箱”に収納できる便利な能力を持つ人もいる。 芸術家に多くみられるらしいこの感覚はレオナルド・ダ・ヴィンチも持っていたとされている。 でも実際はそんなにいいものじゃない。 特に僕の場合は。 生まれつきなのだろうか、気が付いたときにはすでにこの感覚は確かにあった。 ある人を見ると緑に、違う人は青く……人の表情に色がついて見えた。 明らかに人とは違う。 そう感じたのはもうずいぶん前の事だったと思う。 だからこそ、この感覚の事を親しい者以外には話せないでいた。 人と違うことで自分は頭がおかしいのではないか、そう思われてしまうことが怖い。 そんな不安に襲われるからだ。 この不安を日常的に感じていたが、ある日を境に僕の中から消えていった。 そう、17歳の頃、君に出逢ったあの日から。
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