子リスは獅子が大好きで(ディーン)

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 去年最後の年末パーティー、その終わりにドゥーガルドを捕まえた。  猫耳をつけた姿はどこか可愛かったけれど、笑ってしまって睨まれた。でも、全然怖くない。睨みながら赤い顔をしていた。 「どした?」  声をかけてくれるドゥーガルドに、ディーンは大胆に抱きついた。その頃人はもういなかったから、大胆になれた。 「好きです。僕と付き合ってください」  酔いも手伝って、つっかえずに言えた自分を褒めた。心臓はドキドキしていて、不安がいっぱいに埋め尽くしていた。でも決めていたんだ、今日だと。  ドゥーガルドはとても驚いた顔をしていて、目をまん丸にしていた。近い距離にある彼の顔を見上げて、答えを待っている。この時間がとても長くてたまらなかった。 「あの……」 「! 俺は恋愛なんてそんな!」 「ダメ、ですか?」 「いや、それは、ダメっていうか……」  真っ赤になった人の顔を見て、慌てぶりを見て、ディーンはどこか可愛く思った。リアクションが大きくて、ちょっとオドオドした素振りは可愛い。  ドゥーガルドは頭をかいている。真っ赤なまま、それでも真っ直ぐディーンを見ていた。 「俺はがさつで、戦う事が一番楽しいんだ。そんな奴の側にいたって、いい事なんざないぞ」 「側にいられるだけで幸せです」 「いや、だけどよ……」 「僕は本気です! ずっと、ドゥーガルド先輩の側にいたくて頑張ってきました。僕を引っ張りあげてくれたのは先輩です!」 「だからって、こんな……俺は本当に、他人の事なんて考えてやれるような人間じゃないんだよ。いい事なんざない。お前は可愛いんだから、他にいくらでも可愛がってくれる奴がいるだろ?」  どうしたら伝わるんだろう。どうしたら信じてくれるんだろう。  泣きたくなった。途端に涙が伝った。どうしたらこの切なく温かい気持ちを信じてくれるのか分からない。誰かを好きになった事が初めてだから、伝え方が分からない。自分の気持ちを押し込めてきたツケがここにきてしまった。  泣いているディーンを、ドゥーガルドはずっと困ったように慰めてくれた。でも、抱きしめてはくれなかった。その距離が遠く感じて、苦しかった。
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