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昇級試験(ドゥーガルド)
昇級試験当日、ドゥーガルドは円形競技場へと足を向けていた。今年は個人戦、ここで昇級試験が行われる。
試合は剣による決闘方式。降参するか、剣を落とすか、審判が試合を止めるまで行われる。去年とはまったくかっての違うやり方だった。
試合自体は順当に進んでいる。競技場二面で、滞りなく。
だがそれを見守るドゥーガルドは落ち着かなかった。ディーンが出る試合は、緊張に息を忘れるくらいだった。
「おっ、ドゥーもいたのか」
声をかけられてそっちを見れば、レイバンとゼロスがこちらへと近づいてくる。それに、ドゥーガルドは気の無い返事をした。
「どうしたのさ、複雑な顔をして」
「いや……」
その時、ディーンの姿が第二闘技場に現れた。
思わず食い入るように見てしまう。相手は既に格上なのだろう、なかなか決まらなくなっている。
それでもディーンは頑張っている。相手の剣をよく見定めて、右に左に上手く避けて振っている。けれどディーン自身上手く懐に入れていない。攻めあぐねているのだ。
「あの子か、お前を慕っているというのは」
「どっち?」
「金に近い茶髪の方だ」
「どうしてそれ!」
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