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言いかけて、先の飲み会でバレていることや、ボリスがそもそも知っている件を思い出す。当然、ゼロスにバレているのだろう。
「いい動きしてるけど、決定打に欠けるね。相手もそこそこ上手いし、そろそろ正攻法では突破が難しいんじゃない?」
「既に上位三十人だ。昇級試験としては十分な位置だな」
そう、もう上位三十人。ディーンの実力ならよく出来ているほうだ。それでも諦めないのは……。
胸が軋むのは、彼が無理をしている理由が自分にあるからだ。上位十人に入れば、付き合う事を了承したからだ。
「あっ」
「!」
レイバンの声に顔を上げると、ディーンがどうにか相手の隙をついて足を引っかけ転倒させ、剣を突きつけた所だった。
これはドゥーガルドが教えた事だ。剣で敵わないなら、全身を使え。ディーンは動きが素早いから、上手く相手の隙を見つけ出してそこを攻める戦法がいいと教えた。パワーでは勝てない彼に、教えられる精一杯の事だった。
不意に青い瞳がこちらを見る。そして、額に沢山の汗を拭いながらとても嬉しそうに微笑んだ。
ズキッと痛む。こんな無茶をして、後で怪我でもしたら。負けたからといって評価が下がる事はない。それも分かっているはずだ。
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