昇級試験(ドゥーガルド)

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 だって、怪我なんてして欲しくないんだ。痛い顔なんてみたくないんだ。いつも屈託なく、あの青い瞳で笑っていて欲しい。苦しい思いなんてして欲しくないだろう。  しょぼくれて、項垂れて。どうしてやるのがいいのか分からないままだった。 「見守ってやるのが、先輩の度量ってもんだ」 「…怪我、してほしくないです」 「騎士団にいりゃ怪我なんざいくらでもする」 「だからって!」 「あほ! 戦う人間を育てる場だぞ! 誰かに守られるような情けない野郎なら、さっさとここを去って次の人生見つけたほうがいいんだ! それを見極めるのも、この昇級試験の目的だ」  怒鳴られて、諭されて。情けなさが募る。  確かにそうなのかもしれない。訳のわかんないテロリストの影がある。ランバートや、他の先輩達も苦戦するような相手だ。そんな奴らが蠢いている中で、尻込みするような奴は生き残れない。  不意に怖くなった。ディーンが死んだら…それを思うと震えてきた。屈託なく笑うあの青い瞳が何も映さないものになったら。触れる体が冷たくなってしまったら。  グリフィスは呆れたように溜息をついて、ボンと肩を叩いた。 「守りたいもんが出来たら、努力しろドゥーガルド。お前が強くなって、死なせねぇようにするのが確実だ」 「大将…」     
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