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次の試合、また次の試合。ディーンはスレスレで勝ち上がって行く。それでも体力の消耗は激しい様子で、徐々に動きは鈍くなっている。
ただ、ドゥーガルドはそれを見守っていた。見ている事が辛くなっても見ていた。見届ける事が、まず責任だと思えた。
何度も「もういい!」という言葉が喉元まで出てきていた。見ているのが苦しい時もあった。怪我も増えて、薄く切れた傷が目立つようになってきた。
それでもベスト二十。ディーンはいつも以上に頑張っている。
「あの子、根性あるじゃん」
「あぁ、確かにな。だがそろそろ、根性ではどうにもならないだろうな」
ゼロスまでもが感心したように言う。それを、ドゥーガルドも感じていた。
そっと席を立つ。そうして向かったのは、より近い席だ。立ち見だったが、それでいい。ディーンがより近く見える。
試合が始まる。既に満身創痍のディーンはそれでも諦めていない様子で切り込んで行く。柔軟に足を使い、相手の隙を作ろうと仕掛けている。それでも、相手は崩せない。
不意に、負けそうな目をした。頑張っているその気力が、途切れてしまったような弱い目をした。
ドゥーガルドはそれを見て、声の限りに叫んでいた。
「頑張れ!! お前の根性俺に見せてみろ!」
「!」
会場が揺れる様な声は、確かにディーンに届いた。そして、にっこりと微笑んでいた。
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