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結局、ディーンはその試合に負けた。というよりは、審判が止めた。ディーンの体には沢山の小さな傷が出来て、それが血を流していた。とてもじゃないがこれ以上は続けられない。大事を取って棄権するようにと言われ、どうしようもなかった。
それでも大金星だ。明らかに格上の相手を前に怯むこともなく立ち向かっていった。弱虫だったディーンは、強くなったのだ。
ドゥーガルドは慌てて救護室に向かった。そして、そこで治療を受けて寝ているディーンの側に近づいていった。
「ディーン、お前頑張ったよ」
「先輩……」
「かっこよかった。本当に凄かった!」
言っても、ディーンの表情に明るさが戻る事はない。不安になっていると、見る間に瞳に涙が浮かんだ。
「それじゃ、ダメだったんです」
「ディーン…」
「これじゃダメなんです! 僕は先輩との約束を……自分の誓いを守れなかったんです」
戦っていた時の凜々しさが消えて、途端に子供の様に泣くディーンを見て、どうしていいか分からない。ただ、放っておく事はできない。泣きじゃくる彼を、どうしたら……。
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