昇級試験(ドゥーガルド)

7/8
前へ
/47ページ
次へ
 結局、ディーンはその試合に負けた。というよりは、審判が止めた。ディーンの体には沢山の小さな傷が出来て、それが血を流していた。とてもじゃないがこれ以上は続けられない。大事を取って棄権するようにと言われ、どうしようもなかった。  それでも大金星だ。明らかに格上の相手を前に怯むこともなく立ち向かっていった。弱虫だったディーンは、強くなったのだ。  ドゥーガルドは慌てて救護室に向かった。そして、そこで治療を受けて寝ているディーンの側に近づいていった。 「ディーン、お前頑張ったよ」 「先輩……」 「かっこよかった。本当に凄かった!」  言っても、ディーンの表情に明るさが戻る事はない。不安になっていると、見る間に瞳に涙が浮かんだ。 「それじゃ、ダメだったんです」 「ディーン…」 「これじゃダメなんです! 僕は先輩との約束を……自分の誓いを守れなかったんです」  戦っていた時の凜々しさが消えて、途端に子供の様に泣くディーンを見て、どうしていいか分からない。ただ、放っておく事はできない。泣きじゃくる彼を、どうしたら……。     
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

355人が本棚に入れています
本棚に追加