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「弱いままじゃ、僕は先輩に認められない。先輩の側に置いて欲しいのに、それもできない。こんなんじゃ……有限実行も出来ないんじゃ当然です。こんな怪我なんかで…」
悔しく震えながら布団を握り絞め、唇を噛むディーンの髪をかき上げて、ドゥーガルドはそっとキスをした。初めてだった、自分からそんな事をするのは。
照れてしまうが、そうしてやりたかったのは確かだった。泣いていたディーンは呆然とドゥーガルドを見つめている。何が起こったのか、分からない顔をしていた。
「…俺もまだ弱い。それに、お前を信じ切れていなかった」
「先輩?」
「お前を信じて、負けないと構えて見てやれなかった。すまん、ディーン。俺は、お前に怪我をして欲しくない一心でお前の気持ちを削ぐような事を言っちまった。俺は、弱い」
「そんな事!」
呟いたドゥーガルドに強い調子で言ったディーンは、その後押し黙るようにして俯いた。そして、丁寧にドゥーガルドに一礼をするとその場を離れて行ってしまう。
どうするのが正しかったのか、分からない。でも、ドゥーガルドが思った事は間違いじゃ無い。自分が弱いから、まだまだ未熟だから堂々と受け入れてやれていないんだ。
会場を離れたドゥーガルドはそのまま寄宿舎に戻り、剣を手にする。そして一人、迷いや弱い自分を断つように剣を振るい続けた。
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