355人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、ドゥーガルドはぼんやりラウンジに一人でいた。酒を飲みながら、ディーンがどうして近づかなくなったのかを考えていた。
いや、少しある。昇級試験で上位十位に入らなかったから。でもそれは、上位十位に入れば恋人として付き合う約束であって、離れる事は考えていなかった。
「はぁ……」
溜息が多くなっている。自覚するくらいには。
その時、ラウンジの戸が大きく開いた。そしてそこに仁王立ちのボリスと、困った顔のゼロスが立っていた。
ボリスの目が既にキレている。長閑なラウンジで殺気立つのはどうなんだ。その目がドゥーガルドを見つけた途端、怒気の全てを向けてきた。射すくめられるように動けないまま、ボリスはドゥーガルドの前に立った。
「おい、クソ野郎」
ダメだ、完全にキレてる。ドゥーガルドは自分よりも頭一つは小さいボリスを前に涙目になって震えた。
ボリスという奴は普段ニコニコしていて、面倒見もいい。けれどキレた瞬間そのにこやかさは粉々で素の口の悪さが全面に出る。主に剣を握ると性格が変わる奴だ。
「おい、ここで何してる」
「なにって……」
「こい!」
最初のコメントを投稿しよう!