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言うが早いか耳を引っ張ってズルズル外へと連れ出されてしまう。そのあまりの衝撃映像にラウンジ全体が凍り付いている。
一体何をしたというんだ。訳が分からないが逆らった瞬間に足と手が飛んでくる。されるがままに引きずられていった先は、修練場だった。
「おいテメェ! 一人で勝手に腐ってんじゃねーぞ!」
「いや、えっと……」
「ディーンが泣いてたぞ!」
その言葉に、急に胸が苦しくなった。罪悪感が押し寄せてくる。悪い事をしたと明確に言えないけれど、悪い事をしたんだと思う。
ボリスの怒りは尚も収まらない。足こそ出ないが、いつ蹴られてもおかしくはなかった。
「お前、あの子が純粋にお前を好いているのを知ってるだろうが」
「それは…」
「応える気がないなら、どうして中途半端に受け入れたんだ!」
「受け入れるなんて…」
「個人の訓練に付き合って、一緒に飯食って、悩み聞いてやって。これで受け入れてないってのか! ディーンからずっと、好きだって言われてなかったのか!」
「それは……」
ちょっとだけ、可愛かったんだ。手放しに懐いてくれて、表情も多くて。怖がられるばかりで近づいてくるのは同じような強さを求める奴が多くて、あんな無防備に笑ってくれる奴はいなかった。だから…。
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