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「情けない。大事な子一人抱えてやれなくて何が男だ。ふにゃちん野郎、いい加減にしやがれ。恋人無しの俺から見ればな、お前みたいなヘタレがあんな可愛い子に好かれてるってだけで腸煮えるってのに」
「ボリス、半分以上が因縁つけてる」
「あぁ? 因縁つけにきてんだから当たり前だろうが」
確かに、自分みたいなのが好かれている不思議はある。ボリスのほうが絶対に人気があるっていうのに。
ゼロスが溜息をついてドゥーガルドに向き直った。真剣な目で。
「ディーンを狙ってる奴らがあの子を連れてった。訓練用の森だ」
「…え?」
心臓が、嫌な音を立てた。狙ってる奴が多いっていうのは聞いていた。そんなのが、連れて行った?
「ディーンは第一師団だからな、少し気にかけていた。四人でディーンを誘っていた」
「誘いに、乗ったのか?」
「あぁ、その様子だ」
「それなら…」
「いい加減にしろ!」
たまりかねたボリスの蹴りが、ドゥーガルドにヒットする。情けなく転がったそこに、胸ぐらを掴まれ思いきり睨まれる。迫力に身が竦んだ。
「本心な訳あるか! どうしてわかんないんだよ、あの子はお前が好きで、好きなお前を困らせたくなくて、だから今傷つきながら諦めようとしてるんだよ! 泣きそうになりながら踏ん張ってるディーンを、お前はこのまま手放すのか!」
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