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名を呼べばビクリと震えている。服は乱れ、所々に赤い跡があった。それでも、完全に脱がされているわけではなかった。
ドゥーガルドはディーンを抱え上げると、そのまま宿舎の方へと歩いていく。抱えたその肩の上で、ディーンは緩く抵抗していた。
だが今はそんなの聞いてやるつもりなんてない。抵抗されようが暴れようが、今のディーンを押さえ込む事なんて簡単だ。ズンズンと進んで、抗議も無視して、そうして行き着いたのは風呂場だった。
「えっと……」
体、洗ってやりたいと思っていたけれどよく考えれば既に湯は落ちて抜かれている。中も真っ暗なままだ。幸い鍵はかかっていないんだが。
「待ってろ、今体拭くように…」
「いいです、そんなの」
低く暗い声に視線を向ければ、妙に恨みがましい目がこちらを見ている。涙で濡れたまま、それでも負けないと気を張っているようだった。
「いいって……」
「僕なんて、汚れてしまえば良かったんです」
「おい、そんなこと」
「貴方が側にいてくれないなら、他は何だって同じです! どうして邪魔したんですか! 僕は……僕は貴方の影を断ち切りたかったのに…」
新しい涙がポロポロとこぼれ落ちていく。強い目をしながらも、ディーンの声は震え苦しさに胸を握っていた。
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