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「ずるいですよ、ドゥーガルド先輩。僕は貴方を諦めなきゃいけないのに、どうして助けるんです。どうして、希望を持たせるんです。あいつらに滅茶苦茶にされてしまえばもう、貴方の側にはいられないと諦められる気がしたのに」
「ディーン、落ち着けよ。そんなのダメだろ。あいつらがした事はレイプ…」
「僕がついていったんですよ」
尚も言われ、どうする事も出来ずに呆然としている。
けれどこのままにしていいことじゃない。ずっと胸の内が痛む。泣いている彼をどうにか元気づけてやりたくて。また、笑っていてもらいたくて。
でも不用意に触れる事を躊躇った。こんな風にしてしまったのはドゥーガルドだから、次に触れる時には責任を取らなければいけないだろう。ボリスにも言われたばかりだ。受け入れる気がないのなら、変に構ってはいけないと。
考えて、苦しくて、ドゥーガルドは一声「うがぁ!」と叫んで感じるままにディーンの体を真正面から抱きしめていた。
「自分を売るな! 無茶するな! お前が傷ついたり泣いたりすると、俺はグチャグチャになるんだよ!」
「先輩…」
「どうしろってんだよ俺に! こんな気持ち、経験なさすぎて持て余すっての。どうやってお前と向き合えば正解なんだ。俺は、お前を大事にしてやりたいんだよ!」
腕の中の細い体が揺れて、次にそっと背中に触れる。抱きしめられる弱い力が、心地よくもある。縋られる事が、嬉しくも感じる。
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