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そんなのが顔に出ていたんだろう。泣きそうな顔をしたディーンが、グッと一歩強く前に出た。
「本気です!」
「だからなぁ…」
「お邪魔になりません!」
「いや、邪魔だなんて思わないけれどな」
「貴方の事が好きなんです!」
グイグイと押してくる、その勢いたるや凄い。ドゥーガルドはそれに押されるのだが、流石に恋人にっていうのは断り続けている。
「俺は恋愛には向いてないし、お前みたいなのを側にも置いておけない。荒っぽい事ばっかで、とてもじゃないが面倒見てる程俺に余裕はないんだよ」
「僕も強くなります!」
「いや…」
「証明してみせます! 今回の昇級試験で僕が上位十人に入れたら、仮でもいいのでお付き合いしてください。お願いします!」
震えながら手を伸ばすディーンを無下にできない。何より今回は個人戦、上位に入る事はかなり難しいと聞いている。
「…お前の頑張りは認めてやるが」
「じゃあ!」
「…仮だからな」
結局ドゥーガルドはそうはならないと高をくくって了承した。ディーンの実力は上半分には入っているが、上位十人には届かないと知っている。
できはしない。そう思っての事だった。
けれど、決死の目をして嬉しそうに微笑む彼を見ると悪い事をしているようで、正直胸が痛む思いがした。
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