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子リスは獅子に恋をする(ドゥーガルド)
始まりはどこだったか。確か、去年のユーミル祭だった。
その日、ドゥーガルドはコンラッド達と一緒に西の貴族街でテロリストの捕縛をしていた。
それもあらかた落ち着いた頃、多くの客に押し流されそうになっているチビを見つけた。
制服から騎士団の一年目だと直ぐに分かった。小柄で、細っこい。動きもオドオドしている。そいつはパレードコースの警備についていて、押し寄せる客に圧倒されていた。
「どうした、ドゥー?」
「危なっかしいのがいるんだ」
一緒に行動していたボリスに伝えて指さしたまさにその時、パレードを見る観客に押されたそいつはずっこける所だった。
ドゥーガルドは素早くそこに走り込んで、そいつをヒョイと抱え上げ、客の堤防に入り込んだ。ここを抜かれるのはパレードの進行にも影響がある。
「すみません」
蚊の鳴くような声に視線を向ければ、真っ赤になったそいつがジタジタしている。落ち着いた所で下に降ろせば、そいつは真っ赤なまま何度も何度もお辞儀をしていた。
「すみません、先輩! 本当に、僕…」
「あぁ、気にすんな。お前細っこいな。もっと食わなきゃでかくならないぞ」
今にも泣き出しそうなそいつが少し気の毒で、ドゥーガルドは元気を出すようニッカと笑い、頭をクシャリと撫でた。
青い大きな瞳に、まだ子供っぽい柔らかそうな頬、光の当たり加減で金髪にも見える薄い茶の髪をしたそいつは、こちらを見上げて薄らと頬を赤くした。
「ドゥーガルド! 行くよ!」
「おう! じゃあな、頑張れよ!」
そう言って新米隊員の肩をポンと叩いて、ドゥーガルドはその場を去った。
これが、一年目の隊員ディーン・ミラードとの出会いだった。
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