青く眠る

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* * * 乾いた電子音が、夕陽の差し込む病室に響く。 俺はベッドの傍に立ち、たくさんの管に繋がれたその人を見つめていた。 「───森下」 名前を呼んでみるけれど、森下は目を覚まさない。 恐らくこの先も、目を覚ますことはないだろう。 一週間前。 6時58分に芦名田高校前に着くはずのバスは、停留所を前にして居眠り運転のトラックに横から衝突され、死傷者を何名も出す大事故を起こした。 ───そのバスには森下が乗っていた。 森下は意識不明の重体となり、今もなお眠り続けている。 俺は変わり果てた森下の姿を初めて見たとき、その凄惨さに言葉を失った。 つい先日まで一緒に過ごしていたはずの人と、もう挨拶を交わすことすら出来なくなる日が来るなんて、俺は思ってもみなかった。 『真山、わたし本当は、』 森下は最後、俺に何を伝えようとしてくれていたんだろう。 嫌われ者の俺に優しくしてくれたのは、森下だけだった。 デタラメばかりの噂で塗り固められた俺に怯えることもなく、ただの同級生として接してくれた。 太陽のような森下の笑顔が、目に焼き付いて離れない。 俺のために泣いてくれた森下の声が、ずっと頭の中を巡っている。 失いたくなかった。 もう一度、真山、と呼んでほしかった。 終わらない悪夢を見ているみたいだ。 永遠に続く、森下のいない世界。 それをどうすることも出来ない自分へのやるせなさと、ずっと好きだった人を失ってしまう哀しみに、涙が頬を伝って床に落ちた。 あの夢のような時間は、鮮やかに色付いたまま今も教室に眠っている。 二度と還っては来ない。 頼むから、目を覚ましてくれよ。 森下。 その時、森下の唇が微かに動いた。 ───言葉にはならなかった。 【青く眠る 完】
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